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2025.01.08
パーキンソン病の原因 – 遺伝的要因と環境的要因
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「パーキンソン病の原因は何なのでしょうか?」この質問をよく耳にします。以前のコラムでも説明したように、パーキンソン病の発症には複数の要因が関わっていると考えられています。今回は、遺伝的要因と環境的要因を中心に、現在わかっていることをご説明します。病気の理解を深め、より良い生活につながるヒントを見つけていただければ幸いです。  

パーキンソン病の原因 – 遺伝的要因と環境的要因

パーキンソン病の正確な原因は、現在も研究が進められている段階です。しかし、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

1.遺伝的要因

パーキンソン病患者の約10〜15%に、遺伝的な要因が関与していると言われています。
  1. a) 家族性パーキンソン病 特定の遺伝子に変異がある場合、家族内で発症リスクが高まることがあります。主な遺伝子には以下のようなものがあります:
  • SNCA遺伝子:αシヌクレインというタンパク質を作る遺伝子です。この遺伝子の異常により、αシヌクレインが過剰に作られたり、異常な形になったりすることで、神経細胞に悪影響を与えます。
  • LRRK2遺伝子:この遺伝子の変異は、比較的多く見られます。特に、アシュケナージ系ユダヤ人や北アフリカのベルベル人で頻度が高いことが知られています。
  • Parkin遺伝子、PINK1遺伝子、DJ-1遺伝子:これらの遺伝子の変異は、若年性パーキンソン病(40歳未満で発症)と関連があります。
  1. b) 遺伝的リスク因子 特定の遺伝子変異がなくても、ある種の遺伝子変異を持っていると、パーキンソン病のリスクが若干高まることがあります。例えば、GBA遺伝子の変異は、パーキンソン病発症リスクを約5倍に高めるとされています。
重要なのは、これらの遺伝子変異があるからといって、必ずしもパーキンソン病を発症するわけではないということです。逆に、遺伝子変異がなくてもパーキンソン病を発症することがあります。

2.環境的要因

環境要因もパーキンソン病の発症に関与している可能性が指摘されています。
  1. a) 農薬・殺虫剤への曝露 特定の農薬や殺虫剤に長期間さらされることで、パーキンソン病のリスクが高まる可能性があります。特に、パラコートやロテノンなどの物質が注目されています。
  2. b) 重金属への曝露 マンガンや鉛、水銀などの重金属に長期間さらされることで、パーキンソン病様の症状が引き起こされることがあります。
  3. c) 頭部外傷 重度の頭部外傷の既往がある人は、パーキンソン病発症リスクが高まる可能性があります。ボクシング選手やアメリカンフットボール選手など、繰り返し頭部への衝撃を受ける人々での研究が進められています。
d) ウイルス感染 特定のウイルス感染後に、パーキンソン病様の症状が現れることがあります。1918年のスペイン風邪の流行後、多くの人が「睡眠性脳炎」を発症し、その後パーキンソン病様の症状を示したことが知られています。 

3.その他の要因

    1. a) 加齢 パーキンソン病の最大のリスク因子は加齢です。60歳以上で発症リスクが高まります。
    2. b) 性別 男性の方が女性よりもやや発症リスクが高いとされています。
    3. c) 炎症と酸化ストレス 慢性的な炎症状態や酸化ストレスの蓄積が、神経細胞の変性を促進する可能性が指摘されています。

    結び

    このコラムでは、パーキンソン病の原因として考えられている遺伝的要因と環境的要因について解説しました。特定の遺伝子変異や、農薬・重金属への曝露などが発症リスクを高める可能性がありますが、単一の要因だけでなく、複数の要因が絡み合って発症すると考えられています。原因の全容解明には至っていませんが、研究は日々進んでいます。これらの知識を踏まえつつ、日々の生活では、できる範囲で環境要因への曝露を避け、健康的なライフスタイルを心がけることが大切です。
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